北欧手芸の旅


赤の部分の編み込みがかぎ針編み。今回ロングコースで習ったテクニック

ペーパーヤーンの講習風景。日本にも輸入されているようだ

今年の第4回ニットシンポジウムはフィンランドのヴァーサ。海に面した古い町で向かいはスウェーデンのウメオ。ウメオからフェリーで来た参加者も多かったようです。私はストックホルムの友人に会ってから飛行機でヴァーサへ。飛行機には何度か一緒になったことのある参加者、2〜3人も乗っていました。ストックホルムの空港で両替する時間がなかったのでヴァーサでユーロに替えようとしたら、何と両替所がありません! そこで顔なじみの参加者にタクシー代金を借りて無事会場の学校へ。学校の前には静かな入り江が広がっています。ドミノ編みのヴィヴィアン、シンポジウムのオーガナイザーであるキリヤ、エストニアからの二人のアヌーいつも元気なアンネモアとターレ。今年はアメリカ人のエストニアニットの研究家でもあるニットデザイナー、ナンシー・ブッシュ、シンポジウム直前に私にメールをくれたアメリカ人スザンナに会うのも楽しみです。ナンシーは講演に来ると聞いていたので講演日にならないと会えないのかと思っていましたが、初日から参加していました。彼女とは事前にコンタクトを取ってあったので、彼女も会場で私を捜してくれていたようです。今年は日本から私の他にもう一人、プラハとヘルシンキからそれぞれ一人、計4人の日本人が参加ということになりました。

6月23日から始まったシンポジウムは午前中に集合、午後から早速ロングコースのスタートです。今年はコースが多く、選ぶのに悩んだ末「フィンランドの多色使いかぎ針編み」と「カレワラをイメージした編み地」をロングコースに「手紡ぎ」と「ペーパーヤーン」をショートコースに選びました。

「多色使いかぎ針編み」ではフィンランドの伝統的な手編みセーター、コルソナスセーターの編み込み部分のテクニックを習いました。柄はすじ編みでぐるぐる輪に編んで作ります。糸は裏に渡さずに編みくるんでいくのでちょっと手間ではありますが、編み地がしっかりして裏面も綺麗。輪編みにするので出来るテクニックだと思いました。同じコースに、去年は講師を務めたスウェーデン人のテキスタイルデザイナー、カタリーナ・ブリッジスも参加していて、さすが彼女の作品はセンス抜群でした。


カレワラ模様の編み地。真ん中の柄のベース部分を増し目、減し目をして編み縮まないようにしている

アンネモアの手紡ぎ。右手の独楽のようなツールさえあれば糸を紡ぐことが出来る

もう一つのロングコース「カレワラ〜」はケーブル編みで、増し目、減し目をすることで編み地が安定する工夫をしたもの。最初の増し目の方法がわかり難く、時間が掛かってしまいましたが、基本的にはケーブル編みなので問題はありません。20年近く前に買ったアメリカのニット本に載っていたデザインにも増し目、減し目のケーブル編みがあって、まさかそれがフィンランドでカレワラと呼ばれているとは知りませんでした。「カレワラ」というのはフィンランドの神話にあたるもので民族独立のときに精神的支えになりました。

今回のコースで私が一番楽しめたのが「手紡ぎ」です。先生は1 回目のシンポジウムでノルディックセーターにつける刺しゅう布を習ったアンネモア。彼女は糸を紡いで25年!彼女の指先からは、魔法のようにするすると糸が生まれます。四苦八苦しながら私の指先からは太さが一定しない糸が生まれます。でもその楽しいこと! ふわふわの原毛から糸が出来るのですから。このコースのために盛岡の草木染め原毛を持っていきましたが、アンネモアの売っていたノルウェー産羊毛の(ナチュラルカラー、生成、焦げ茶、ベージュ)色に惹かれて購入。3色を適当に混ぜながら紡ぐとオリジナルの糸ができます。こうして生まれた糸は1cmだって捨てられません。物を慈しむ気持ちが沸いてきます。私が木陰で紡いでいたら、ロバニエミから今回で3度目になる参加者が「幸せそうね!」と声をかけてくれました。確かに癒されます。日本でも紡ぎ駒が手に入りますので試してみてはいかがですか。

ヴァーサの近くには野外ミュージアムが沢山あり、3回も見学に出かけました。どこのミュージアムでも案内係りの方達は全員民族衣装を付けていて、男の方は綺麗な編み込みのセーターを着ていました。ミュージアムショップでは当然資料探し。9 月25日発売の暮しの手帖で試している原始機に似ている織り機を見つけて購入しました。これはシンプルで楽しい織物ができそうです。

29日にシンポジウムが終わり、その日にヘルシンキへ移動。30日のヘルシンキは小雨で寒く、しかも月曜日でミュージアムはお休み。仕方なくお店をのぞき、買い物を楽しみました。日本でもお馴染みのマリメッコはちょっと歩くだけで何軒も目に付き、小物や文具も種類が豊富で欲しい物が沢山でした。また、フィンランドは好日国で日本食やお寿司屋さんが目に付きました。

7月1日はいよいよエストニアへ出発。ヘルシンキからは高速フェリーで1時間45分という近い国です。今年の楽しみはナショナルミュージアムのあるタルトに行くこと。2日の朝高速バスに乗って2時間半、ゆっくりのスタートでしたのでタルトに着いたのは11時。地図を見ながらうろうろしていたら初老の紳士が親切に声をかけてくれました。旅ではこんな親切がその国の印象を良くしてくれます。ホテルにチェックインしてから古い建物が素敵なカフェでお昼ご飯。そこは本屋さんの一部でさすが大学街らしい知的な雰囲気が漂っています。タルトにはタルト大学があって、そこには日本語学科もあり、エストニアが日本に目を向けている国だということが感じられます。

タリンの旧市街地にあるロシア正教の教会。エストニアにはこれ以外にカソリック、プロテスタント、ユダヤ教の教会もある

城壁に囲まれた旧市街地の道はごろごろ丸石の石畳。スニーカーでも疲れる

タルトにあるエストニアナショナルミュージアム

ナショナルミュージアムには事前に私の来館目的を連絡したところ、学芸員を紹介してくれたので担当者を訪ねました。彼女は展示品を一つ一つ説明してくれて楽しい見学ができました。現地の人が今年は本当に気持ちのいい夏らしい天候だと言うとおり、木漏れ日を浴びながら歩くタルトの街は長期滞在をしたくなるくらいの心地よさでした。夕方のバスで帰れば日帰りが可能でしたがタルトで一泊してタリンに戻りました。

エストニア最後の日は建築家のアヌーが自分のカントリーハウスに招いてくれ、のんびりと、庭で軽い夕食を共にすることができました。入り口にはジャスミンが咲き乱れ、ベリー類が実っています。リンゴの木も5本あり、秋には摘んでジャムにするのだとか。なんといってもご馳走だったのは彼女の庭でとれた「蜂蜜」です。彼女は自分の生活を「very simplelife」と言いましたが、今見直されている「スローライフ」そのものであり、実に豊かな生活です。確かに物質的には豊かではないかもしれませんが、100年前おじいさんが買った籐のテーブルセット(庭に出してきてくつろぎました)、建築家だったお父様が作った家の飾りなど、どれもお金に換えられないもの。「旅の最後をのんびり過ごして欲しかったのよ」というアヌーの優しい心遣いに感激した一夜でした。

エストニアはニットも素晴らしいのですが、刺繍も素晴らしい。去年タリンの古本屋で手に入れた民族刺繍の本には驚きました。ところがナショナルミュージアムの学芸員が見せてくれた刺繍の研究書(2冊)というのが、何と昨年私が手に入れた本だったのです。でも私が持っているのは1冊だけ。残りの1冊も手に入れたいと思い、出発日の朝、去年行った古本屋を探し出し、刺繍の本が欲しいと言ったところあったのです!

こうして今年も幸せなエストニアの旅を無事に終えて、コペンハーゲンを経由して帰国となりました。

エストニア・ナショナル・ミュージアムで買ってきた冊子。小さいながら日本では手に入らない情報が沢山

コペンハーゲン近郊のミュージアムが出している本で、ヒーダボーブックの資料に役立った。ドミノ編みのヴィヴィアンが送ってくれた

今回習ったかぎ針編み編み込みテクニックを使ったポーチ。材料キットで作ったが10ユーロは安い

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